きものは日本の伝統的な文化を背景に持つファッションとして、世界からも高く評価されています。近年、人生儀礼の簡略化や着装や洗濯の難しさ、価格の高さなどにより需要は減少しましたが、憧れは根強く、また多様な色や柄、素材、仕立て直せば世代を超えて着継げるリサイクル性なども改めて注目されています。
一般にきものは染織品として認識され、その素晴らしさが称えられます。しかし、文化の香り高い織物や染物も、それ自体では平面の布です。人が着て美しさを発揮する「きもの」へと仕立てる工程なしには、着ることさえできません。この仕立てを担っているのが「和裁士®」です。日本固有の「運針」を駆使し、知識、知恵、創意を込め、一人ひとりにフィットするきものを縫い上げています。しかし、今日ではきもの需要の減少や海外縫製の増加に伴い、国内における「和裁」の継承が困難な状況にあります。
本会は後継者の育成と伝統技術の保存を図る目的で、創立以来の中枢事業として、若い世代を対象とした全国和裁技術コンクール(競技会)を毎年開催しています。より多くの参加者を募り、技術研鑽のモチベーションを高める機会創出の観点から、第65回より会員以外にも対象を広げた作品応募によるコンテスト形式に転換しました。審査やその結果もオンラインで公開し、公平性を担保するとともに、和裁および和裁士○Rの価値伝達につなげていく所存です。67回目の今回はより気軽に参加でき、人材育成につなげていけるよう長襦袢の縫製も課題に加えます。「きものの部」「長襦袢の部」の2本立てでコンクール事業の進化に取り組みます。